遺伝子検査室のご案内

遺伝子検査について

当院では、1998年より遺伝子検査室を整備し、臨床に役立てています。主にHIV感染症における薬剤耐性ウイルスの検出と日和見感染症の病原体の遺伝子診断を行っています。

薬剤耐性検査について

薬剤耐性HIV-1を検出する方法には、大きく分けてHIVの遺伝子配列を調べる薬剤耐性遺伝子型検査(Genotypic test)と、薬剤の存在下でウィルスの増殖をみる薬剤感受性検査(Phenotypic test)という2つの手法がありますが、当院では遺伝子型検査を施行しています。遺伝子型検査はウイルスの遺伝子配列を検査することにより薬剤耐性の有無を見るものです。

臨床上、薬剤耐性ウイルスが問題になるのは、耐性ウイルスに最初から感染している場合(国内での調査では新規感染者の8-10%前後の頻度)と、治療の途中でウイルスが耐性ウイルスに変異する場合です。

HIV薬剤耐性検査ガイドライン」では以下の場合に薬剤耐性検査を推奨しています。

  1. HIV感染の新規診断時(急性感染症例を含む)
  2. 治療開始時
  3. 治療開始後十分な治療効果が認められない時
  4. 治療中薬剤耐性の出現が疑われた時
  5. ウイルス学的失敗以外の理由で薬剤を変更する時
  6. 治療の中断と再開時
  7. HIV感染妊婦において予防投与を行う時

現在服用中の薬剤に対する耐性ウイルスは、薬剤変更後は感受性ウィルスの陰に隠れてしまって検出できなくなります。しかし消えてしまったわけではなく、同じ薬を開始すると再度出現して治療失敗の原因となります。長期にわたるHIV治療において、過去の薬剤耐性の情報は極めて重要であり、服薬中にウイルス量が感度以下まで抑えられない場合は、一度検査することをお勧めします。

薬剤耐性検査については、「抗HIV薬の選択および再選択の目的で行った場合」は3か月に1回であれば保険適応になります。プロウイルスDNAでの薬剤耐性検査検査、ウイルス指向性検査(MVC使用時に必要)やサブタイプの確認等、特殊な検査も行っておりますので、必要な際にはご相談ください。

薬剤耐性についての詳しい情報は「薬剤耐性HIVインフォメーションセンターHP」をご参照ください。

日和見感染症の診断

日和見感染症の病原体検出としては、現在ニューモシスティス肺炎(Pneumocystis jirovecii)、結核、非結核性抗酸菌症を対象として検査を行っています。また性感染症としてHBV-DNAの定量も行っています。いずれも迅速性など院内測定の利点を活かして柔軟に対応しています。