HIV感染者の食事について

HIV感染症は治療薬の進歩により病状のコントロールが可能な慢性疾患と考えられるようになりました。しかし栄養障害、薬の副作用や生活習慣病が起こる事も多いようです。

今後、日和見感染の予防や生活習慣病のリスクを減らし、体力や免疫力を保つ為には栄養管理を適切に行うことが大切です。

通院中の方で栄養相談をご希望の方は(とくに実際に料理を作られる家族などもごいっしょに)、医師にお申し出下さい。体脂肪/筋肉量等の測定なども行いますのでご遠慮なくお申し付け下さい。

食事のポイント

栄養のバランスに気をつけます

好き嫌いや偏食を避け、主食(ごはん、麺、パンなど)、主菜(肉、魚、卵、大豆製品など)、副菜(野菜類)の3つからそれぞれ選ぶ様にします。また主食、主菜と副菜がそろえば単品でもかまいません。メニューのレパートリーを増やすことも一つの工夫です。

3食しっかり食べましょう

一日3食規則正しく食べましょう。どか喰いやムラ喰いは体に負担がかかるので気をつけます。栄養不足で体力が消耗すると日和見感染をおこしやすくなるので、十分な栄養をとりましょう。一度に食べられない時は、分割しておやつなどで補います。

新鮮な物を、清潔に、迅速に食べる

免疫力が低下すると食中毒が起こりやすくなります。十分な洗浄を行い出来るだけ加熱して食べましょう。食事は作りおきを避け、食材は賞味期限内でも早めに食べましょう。CD4リンパ球細胞数が200cell/ul未満であれば生水や生もの(刺身、生肉や生卵)は控え必ず加熱します。

また、食品だけでなく手洗いを十分に行うことや、食器や器具の衛生にも気をつけましょう。洗浄には、アルコール製剤の噴霧や次亜塩素酸ナトリウム溶液に浸けたりする方法があり、これらは薬局で市販されています。

バランスのとれた食材の選び方

身体の機能を維持するには、いろいろな栄養素をとる必要があります。しかし、1つの食品ですべての栄養素を含む物はないので、いろいろな食品を組み合わせて食べましょう。栄養バランスをとるためには毎食、各食品グループから1、2品ずつ食べる様にしましょう。

1日の食事量の目安 1600キロカロリー

食事の注意点

食事とお薬

プロテアーゼ阻害剤の副作用として肉体的・代謝的異常をきたすことがあります。他にも、抗HIV薬によって下痢、食欲不振や嘔吐などの副作用が起こる事があるので注意します。

リポジストロフィー 糖、脂質代謝異常と外見上の脂肪の分布異常

健康食品について

基本的には普通の食事を食べていれば不足はないと思われますが、もしも、十分に食事がとれない場合は補ってもよいでしょう。ただし、中には薬の作用に影響を及ぼすもの(にんにくエキス、西洋オトギリ草などダイエット補助食品など)もあるので、医師に相談するようにしましょう。また、とりすぎは害になる事もあるので気をつけます。

外食の時は

栄養素のバランスに過不足が生じ易くなります。また、エネルギーが高くなりやすいのでバランス良く食べる事が大切です。出来れば定食を選ぶか、単品ならプラス1品してみましょう。また、自宅での食事と外食を組み合わせて考えることでバランスをとります。

  • 多くなりやすいもの…主食、油、塩分など
  • 不足しやすいもの…野菜類、果物、乳製品など

外食のメニュー例

和食 焼魚定食、鍋焼きうどんなど
洋食 セットメニューなど(サラダ、スープ、デザートのついた物)
中華 チャンポン、八宝菜など

※他に、宅配による食事サービス(有料)もあります。

常備食品を備える

体調が悪い時や、買い物が出来ない場合に備えて、缶詰、冷凍食品やレトルト食品を準備しておくと良いでしょう。但し摂りすぎは栄養バランスの偏りや塩分のとりすぎになる恐れがあるので気をつけます。

こんなときどうするの?

体重が減ったとき

  • 朝食、昼食、夕食を規則正しく主食、主菜、副菜をそろえて食べます。
  • 嗜好に合った食べ物をとり入れます。
  • 油を使った調理の工夫をします。
  • でんぷんや春雨を利用します。

食欲がないとき

  • 主食に変化をつけてみます。(寿司、おにぎり、麺類)
  • 盛り付けや食器の工夫もしてみます。
  • 香辛料、香味野菜、種実の香りや風味を生かしましょう。
  • 間食におにぎり、パン、乳製品など摂取することもお勧めです。

下痢のとき

  • 水分を積極的に補給します。
  • 水分や栄養分の富んだもの(プリン、ゼリーなど)を選びます。
  • 油料理や繊維の多い食品、牛乳など乳糖含量の多い食品は避けましょう。

吐き気、嘔吐のあるとき

  • 少量を頻回に分けて食べましょう。
  • 脂肪の多い食品や油っこい料理は避けます。
  • 冷たいもの、室温程度の料理の方が食べやすくなります。
  • 食後すぐに横にならないで上体を起こしておきます。

便秘のとき

  • 食物繊維を積極的に摂取します。
  • 水分を頻回に補給する様にします。
  • 規則正しい食生活と適度な運動を行います。

咀嚼、嚥下障害のあるとき

  • 柔らかく、喉ごしのよい食品を選びます。
  • 細かく刻んだり、すりおろしたりします。
  • かたくり粉などでとろみをつけます。
  • 刺激のある食品や料理を避けましょう。
  • ミキサー加工食品(市販)や液体にとろみをつける補助食品もあります。

口の中がしみる

  • 酸味の強いものは控えます。
  • 熱い物、堅いものは控えます。
  • 濃い味付けは避け薄めの味付けにします。
  • 炭酸飲料、香辛料、刺激の強いものは避けましょう。

口腔乾燥症

  • 食事時、食間を問わず、頻回に水分をとるようにします。
  • 口腔衛生に注意しましょう。

生活習慣病(成人病)

  • 病状に合わせてバランスと量を考慮した食事をします。
  • 適度な運動をしましょう。
  • 食べ過ぎだけでなくスナック菓子、果物やジュース類などにも気をつけます。

免疫力が低下している時(CD4が200/μl未満)のお食事Q&A

Q. 低温殺菌、高温殺菌などの殺菌法の違いは?

食品を加熱によって殺菌する方法です。加熱温度と時間の組み合わせにより低温長時間殺菌(LTLT)、高温短時間殺菌(HTST)、超高温殺菌(UHT)があります。いずれも微生物の耐熱性や熱の伝わり方、品質の劣化速度を考慮して決められます。しかし、あくまでも微生物を完全に殺菌するのではないので過信は禁物です。

Q. 食事はどのような点に注意すればいいでしょうか?

CD4が少なくなると食中毒菌である腸炎ビブリオやサルモネラ菌の汚染を防ぐ為にも生もの(生肉、生魚、生卵など)は禁止します。加熱した食品や料理もを保存する場合、冷蔵庫を過信してはいけません。調理した物は出来るだけ早いうちに食べましょう。

Q. 衛生上気をつけておきたい献立を教えてください。

寿司、刺身、生魚、生かき(貝)、ステーキ(完全に加熱は可)、生卵、期限の切れた食品、ショートケーキ、シュークリーム、自家製アイスクリーム、生水や井戸水などに注意します。

Q. コンビニなどの弁当は加熱すれば安全ですか?

問題ありませんが、食べるときは消費期限内であっても早めに食べましょう。

Q. 電子レンジでの調理は安全ですか?

電子レンジは短時間で料理の味、栄養価を損なわずに調理が出来、殺菌効果も期待できます。しかし低温スポットを残す可能性があるので注意します。惣菜などを加熱するにはふたなどをして数回途中でかき混ぜるようにします。

Q. 缶詰を開缶した後の取り扱いはどうするのですか?

開缶後ガラスやプラスチックなどの容器に移し、ふたをして冷蔵庫で保存します。出来るだけ早く食べましょう。

Q. 生タイプ(ラーメン、みそ汁)のインスタント食品は食べても良いですか?

このタイプの食品は食品を包装して殺菌するので問題ありません。

Q. もずくや海草は食べても良いですか?

これら海藻は生食することが多いのでCD4が低下した場合は避けましょう。しかし、ひじきやわかめスープは加熱するのでかまいません。

Q. フルーツヨーグルトは大丈夫ですか?

フルーツヨーグルトなどに入っている果物は一般に加熱処理されていることがい多いため問題ないと思われます。

Q. 水道水は大丈夫ですか?

水道水に含まれることのあるクリプトスポリジウム対策として、飲み水は煮沸したものを飲む様にしましょう。免疫の低下した状態では衛生の観点から生水は避けます。

Q. 湯冷ましはどのくらい保存できますか?どういうところに気を付ければ良いでしょうか?

沸かしたお湯を保存する時は冷蔵庫で行い、出来るだけ早めに飲みましょう。保存容器は衛生的な口の小さいガラス瓶やペットボトルを利用すると便利です。

Q. 酢物や酢じめは食べても良いですか?

酢物や酢じめは生魚を塩でしめて酢に浸す料理ですので、魚を完全に殺菌する事が出来ないので避けましょう。

Q. 有機栽培の食品は食べても良いですか?

有機栽培とは農薬や化学肥料を使用せず堆肥主体の土壌で作られた作物です。したがって寄生虫や細菌が多く付着している事があるので、注意が必要です。

Q. 食中毒予防で気を付けることを教えてください。

  • 食中毒予防は「清潔」「スピーディー」、「加熱・冷却」が原則です。「清潔」とは細菌類を付けない事。「加熱」とは細菌類を殺す事。また、「スピーディー」かつ「冷却」とは細菌類を増やさない事です。
  • 手指は、想像以上に細菌類に汚染されているので良く手を洗うようにしましょう。
  • 冷蔵庫を過信しないようにして下さい。食材などは出来るだけ早く使いましょう。
  • 調理器具は適時消毒します。また、スポンジたわしや、亀の子たわしは細菌のすみかになるのでこまめに洗浄・乾燥・取り替えをして下さい。
  • 野菜や果物は流水でよく洗って調理しましょう。
  • 近年はペットを室内で飼う人も多くなった事でペットによって食品が汚染される食中毒が多くなってきました。ペットをさわったら必ず手を洗い、同じ箸で食べさせたり、口移しはやめましょう。