感染管理・針刺しなど曝露事故対応

HIV感染管理

血液や髄液、およびこれらを含んだ体液を介した感染が起こりえますが、その他の患者由来検体(唾液、汗、非血性便など)での感染のリスクは極めて小さいですのでHIV自体の感染対策としては、標準予防策で十分です。

具体的には、採血時には
1. 適切な大きさの手袋を着用する
2. 可能な限り真空管採血ホルダーを使用し、針による分注を回避すること
3. 原則的にリキャップはしないこと
4. 使用後は針を直ちに廃棄ボックスに廃棄する

また、血液(髄液)がかかる可能性がある場合には、目、鼻、口を覆うことができるマスク、ゴーグル、アイシールドを着用する。

針刺し等曝露事故発生時の対応

曝露後予防内服(Post-Exposure Prophylaxis; PEP)を全く行わない場合の感染率は、針刺し事故の場合で0.3%(0.2-0.5%)、粘膜曝露の場合で0.09%(0.006-0.5%)です。皮膚面への曝露については、皮膚表面に傷がある場合は感染リスクがありますが確率は非常に低いです。HIV治療薬を内服し、ウイルスがコントロールされているHIV感染者からの暴露ではさらに感染リスクを抑えることが出来ます。

適切なPEPを行った際の感染リスクはAZT単剤によるPEPでも感染リスクを80%以上低下させることが示されています。多剤を併用した予防内服ではより高い感染阻止効果が期待され、実際に米国におけるサーベイランスでも国内においても1999年以降、職業的曝露によるHIV感染が確定した例は1件も報告されていません。

針刺し等曝露事故発生時の対応

ご不明な点がございましたら当院へお問い合わせ下さい。

関連サイト

福岡県「HIV感染防止のための予防内服マニュアルについて」もご参考ください。
針刺し事故等の場合にご利用ください。近くの対応可能な医療機関をご確認ください。

PEPの実際

  • 曝露部位を多量の流水と石けん(眼球・粘膜への曝露の場合は大量の流水)で洗浄する。
  • 曝露後可能なかぎり速やかに(出来れば2時間以内)初回内服を開始する。リスクが高いと判断される場合には曝露源のHIV検査結果を待たずに受傷者の判断でPEPを開始してよい。
  • 女性の場合、妊娠しているかどうかの確認が必要。予防薬の胎児への安全性は確認されていないので、妊婦が服用する際には充分な自己決定が不可欠。
  • 予防内服は4週間継続する。
    ラルテグラビル(RAL)400mg1回1錠1日2回+テノホビル/エムトリシタビン(TDF/FTC)
    1回1錠1日1回 又は
    テノホビルジソプロキシルフマル酸塩+エムトリシタビン
    テノホビルアラフェナミドフマル酸塩+エムトリシタビン
  • 1回目の内服後、内服を継続するかは専門家とご相談ください。
  • 曝露後の予防内服は労災保険の保険給付として認められています。